ヘンタイをめぐる冒険

 完璧なヘンタイなどいない。 しかし、ヘンタイではない人間もこの世に存在しない。
 

キセキ

■性欲があまりなかった。オナニーも含めて数ヶ月射精しなかった時期もあった。高校生活を回想するときによく浮かぶのが、友人たちのヘンタイオナニー自慢を聞きながら適当に話を合わせていた光景。思春期の男子が性欲に取り憑かれるのはごく普通だと思うから、自分はある意味ヘンタイだった。

■十代の僕は、友人と違うそんな部分を誇らしく感じていた。セックスすることばかり考えるのは不純なような気がしていたし、同じクラスの女のコと付き合っていたときは、「カラダ目当てじゃないよ」みたいなことをしょっちゅう口にして、ピュアな愛をアピールしていた。

■セックスすることばかり考える方が人間としてピュアである、という考えに辿り着いたのは、それからずっと後になってからだ。6つ年上の人と婚約して、すぐに婚約破棄した24歳の冬から半年間くらい、自分の度胸を試すようにたくさんの女にアプローチして、フラれたりOKされたりした。すると、性欲もじわじわと掘り起こされてきた。20代半ばで思春期を迎えたようなものだ。

■その時期に学んだこと。女を口説くなら、カラダ目当ての方が上手くいく。

■女性に本気で惚れてしまったときはフラれたけれど、ちっとも惚れてない女性に「愛してるよ」とか囁いたらヤレた。断られても傷つかないから、断られることを恐れない。こっちが必死になっていないと、相手も軽い気持ちで受け入れてくれる。愛情がないと平気でウソもつけるから、相手に応じて戦略を変えるフットワークも身についた。格ゲーが上達するみたいに、判断力、瞬発力、応用力がぐんぐん伸びていった。

■だから、「これからは女に惚れないようにしよう」と考えるのは自然ななりゆきだったと思う。そうなると当然、恋愛の仕方を忘れてしまう。でも、ちっとも問題なかった。

■恋なんて、しない方がいいに決まっている。忘れ物をよくするし、くだらない最新ヒット曲の歌詞に共感しちゃうし、圏外に出たくないから地下鉄に乗らくなる。そして、何よりも仕事が手につかない。30分で書けるはずの原稿に丸1日かかる。会社を辞めてフリーランスになってからは、仕事が手につかないことはメシが食えないことに直結するから、恋というものを自分から遠ざけようとする意志はいっそう強くなった。セックスすることは、エロ本のライターにとっては芸の肥やしでもあるわけだし。

■ただし、そうして何層にも張り巡らせた防衛ラインを、恋は一瞬で突破してくる。ごくまれに。

■もちろん、面倒くせえなと思う。今度は何本の原稿の締め切りを延ばしてもらうことになるんだろう。次にサイフをなくすときはいくら入ってるんだろう。二次会のカラオケで編集部の人間が熱唱する「2人歩いた軌跡」とか「それって奇跡」とかいう歌詞を画面で追いながらジーンとしちゃうのかな。うわっ、だせえな。

■過去の傾向からいくと、惚れちゃったら確実にフラれる。だけど、惚れちゃったものは仕方ない。で、いつか、ヤレなかったことを後悔する。
 
 
仲西 敦 (ナカニシアツシ)

フリーライター。インタビュアー。AV評論家。 エロ雑誌とアダルトサイトでなんかいろいろ書いてます。



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